Hiro Tanaka 『Dew Dew, Dew It’s』そして新作

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玉置の連載2回目となる今回は、アメリカのインディーバンドと一緒に、アメリカやヨーロッパで開催される多くのツアーに同行し撮影を続けているHiro Tanakaを紹介致します。
写真集を発売するために資金集めをするKickstarterのページには、バンドマンが”ある男”の写真や彼のパーソナリティーについて紹介した文章に加え、そこには彼のパワフルな写真がいくつも掲載されていた。そして、このページの登録者でありまた彼の写真集を出版したAsian Man Recordsの社長であるMike Parkが、どれだけこの写真家の写真が素晴らしく世界へ広めたいのか、と熱弁する。
kickstarter.com/projects/asianmanrecords/hiro-tanaka-photo-book

 

2012年、このKickstarterのページを、偶然にもネットサーフィング中に発見して以来、私にとって”Hiro Tanaka”は注目する写真家の一人である。目標金額より$2,000以上も寄付を得てレコードレーベルから発売された初写真集『Dew Dew, Dew It’s』は、アメリカのインディーバンドといくつものツアーに同行し撮影した写真群である。

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2009年からカリフォルニアに移り住み現在も撮影を続ける彼の写真は、ただ単にライブの様子を撮影しているだけでない。ツアー中にバンで移動し友人宅で過ごす時間であり、またパーティーやBBQなどのイベント、そしてアメリカの自然や風景を対象に、ツアーを通して数多くのバンドマンの日常を映しだす。
「誘われればどんなツアーにでも行く」と笑いながら言ってのける。観客が数人のバンドから1000人単位を集めるバンドのツアーにも同行する、この幅広い交友関係とフットワークの軽さが、バラエティに富んだ写真集になった一つの要因であろう。

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昨年から新たなシリーズをスタートした。田舎町から大都市をツアーで訪れバンドマンの日常を中心に撮影をしてきた彼は、大都市ニューヨークの中でも観光地として有名なタイムズスクエアを撮影場所として選ぶ。

ブロードウェイの交差点に建つ建物は、ミュージカルや企業の巨大広告・電光看板、ネオンサインにより壁面の肌理を見せることもなく埋め尽くされている。それらは、ニューヨークの(=アメリカの)華やかな都市として、その場を訪れる者を魅了させる。特にミュージカルの聖地と言われるブロードウェイミュージカルの看板や、巨大なマクドナルドサイン、コカコーラの看板などアメリカを象徴する企業が広告を出す。ブロードウェイには引っ切り無しにイエローキャブが走り、特に夜はネオンの光により、広告の演出効果は大きい。

しかし、Hiro Tanakaの写真では、巨大な広告やネオンサインはそこがブロードウェイということだけを察する程度にしか映らない。むしろ、その地を訪れる観光客や、観光客向けにコスチュームを着てパフォーマンスをする者などを対象に撮影を行う。その中には、もちろんのことニューヨーカーも含み、その地で生活する者も撮影の対象である。アジア系のおじさんが売店で働き、その前をニューヨーク市警の白人警官が歩く。道路ではメキシコ系や黒人の男達が工事をし、パーティーの後であろう太った女性がマクドナルドの飲み物を片手に歩く。
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スティーブン・ショアーを彷彿させるドメスティックでありローカルなアメリカの日常を撮影してきたのだが、なぜタイムズスクエアというこの特定した地を選ぶのか。人種のるつぼと言われるアメリカであるが、世界各国また国内から観光客が集まるこのタイムズスクエアを撮影したHiro Tanakaの写真は、なんとも異様で不思議な存在感を醸し出す。その妙な雰囲気こそ「これがアメリカだ」とはっきりと写真を通し我々に訴えかける。日本人であり観光客でもある彼もまた、その一部でもあるのだ。
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私がここで伝えたいのは、彼の写真がすばらしいだけではなく、インディーレコードレーベルから写真集が発売されたという面白さだけでもない。”ある男”=彼が日本で生まれ育った後にアメリカへ渡たり、ここまでアメリカ文化に溶け込み撮影を行ってきた事実は驚愕に値する。そこまで考えると、今なお残る人種差別や経済格差などアメリカが抱える多くの問題点を、彼の写真からシニカルにそして身体的に感じとることができる。

誰にも真似のできない彼のコミュニケーション能力の高さを知ると、なぜ彼がこれほどまでに日本人としてアメリカ文化に溶け込み、またいくつものバンドと共に数多くのツアーに同行しながらその力強い写真を撮り続けることができるのか理解することは容易である。ファインダーを覗きシャッターを押すだけが写真家の仕事ではないことは、重々承知していることだが、彼の場合、そのコミュニケーション能力もまた写真家として一つの武器なのである。

ディレクター 玉置慎輔

Hiro Tanakaのページで写真とnewsをご覧頂けます。
www.asianmanrecords.com/hiro

大阪にあるbook of daysで写真集『Dew Dew, Dew It’s』をご購入頂けます。
bookofdays-shop.com

2015-03-31 | Posted in 作家紹介Comments Closed 

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