赤鹿麻耶『Did you sleep well?』ぴょんぴょんプロジェクト vo.1

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玉置の連載3回目となる今回は、大阪をベースに活動する赤鹿麻耶を紹介致します。

 

まだ寒さが残る2月、「次は、鶴橋の空き地で展示します」と赤鹿さんから 教えてもらった。???なこの「空き地での展示」では、どのように展示をするのだろうか。地べたに寝転がすのか、雨が降って写真が濡れはしまいか、はたまた小屋でも建てるのだろうか、と、不思議にそして疑問に思わずにはいられない。

 

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その数ヶ月後に頂いたDMによると、どうやらほんとうに空き地でやるみたいだ。
場所は、鶴橋と言っても大阪環状線の桃谷駅と鶴橋駅の間、所謂コリアンタウンの住宅密集地を東に入組んだところ。地図から見てもどうもアクセスが悪そうな場所で、なおかつ色々と複雑な環境の中でされるという印象であった。またこの鶴橋の展示の他に、東京では銭湯で展示するというからますます不思議な話しである。

 

ヤッテミヨウ14©赤鹿麻耶 「ヤッテミヨウ」

風を食べる16©赤鹿麻耶 「風を食べる」

赤鹿麻耶は、2011年の写真新世紀グランプリを受賞したシリーズ「風を食べる」を含めたこれまでのシリーズにおいて、自分の求めるイメージをストーリーのある世界として構築することに長けた作家である。一見スナップ写真のように”現実そのもの”とも感じさせる作品群だが、実はよくよく見てみると1つ1つの写真を物語として丁寧に作り込んでいることがわかる。
「ヤッテミヨウ」の派生として捉えられる「風を食べる」も同様に、撮影するイメージを事前に頭の中で作り上げ撮影する。その後のロケハンや密に練られた計画の下、どれも特徴的なモデリングとメイク、そして衣装はその作りあげたイメージを具現化する為の一つの方法でもある。写る人々はオブジェとしてイメージ内に配置され、あまり主張はしない。

did you sleep well_web一方で、この鶴橋での展示「Did you sleep well?」では、巨大にプリントされた顔写真を筆頭に、両手にアイスを持つレオタード姿の女性や、人魚の格好をしたぽっちゃっとした男の子など、これまでの赤鹿作品とは少し違い、どの写真もそこに写る人々の存在が際立たされ、主体として確立されている。

巨大に出力されたクローズアップの写真は、どの立ち位置から見ても巨人が窓からこちらを覗くかのように配置され、メイクと表情がそのインパクトをさらに増す。また、ベランダには、顔の輪郭に切りとられた巨大な写真が、布団を干すように逆さに設置される。

blog14-800x533一方の壁面では、トマソンの原爆タイプに配置された写真たちは、前作までと同様にそれぞれが1つの物語として、どこか演劇集団を感じさせるよう構成されている。これまでにも増し、興味の対象である中国のファッションやメイクなどの文化は、記憶としてストックされ、小道具やモデルのポージング、メイクに至る細部に反映されているように思う。

blog211-800x533写真の通り、衝撃的な空間演出であったことは言うまでもないが、展示を観た者の誰もが圧倒された今回の展示方法は、ただ単に「大阪のノリ」なのだろうか。もしくは、サブカルなのか。はたまた、フイルム/印画紙主義文化への批判なのだろうか。

周辺の住宅や、行き来する人から聞こえる韓国語とともに、キッチンの窓からは食欲をそそる韓国料理の匂い。そのような中で、この”赤鹿演劇団の団員”を写した写真作品を通し、大阪の暗部、もしくは日本にある政治/社会問題を考えさせられる。もちろんのこと、それらの問題は写真の中には含まれていない。むしろ、「中国っぽい」というステレオタイプをうまく利用したどこか皮肉として感じとれる。

今回の空き地で展示された彼女の写真たちは、私にとっては”didn’t sleep well”だったと思う。むしろ、それらの写真群を観ると、彼らは活き活きとしており、今にもこの空き地で「ぴょんぴょん」と踊り出し、おもむろに演劇をはじめそうに感じたからだ。しかし、作家本人である赤鹿からすると、赤鹿にとっての彼女の写真が、本来あるべき姿として展示されることにより、写真の中の彼らはスヤスヤと気持ち良く眠っていたのではないだろうか。そして朝になると、前の晩、隣の家から漏れる光に照らされた彼らを覆ったブルーシートを、まるで彼らを起こすかのように取るのだ。写真に写る一人ひとりに”Did you sleep well?”と問いかけながら。

WaPoC ディレクター 玉置慎輔

画像提供:赤鹿麻耶

以下より、展覧会風景をご覧いただけます。
赤鹿麻耶ぴょんぴょんプロジェクトvol.1 大阪展/東京展

2015-06-30 | Posted in 作家紹介Comments Closed 

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