カワトウ “KEIHANSHIN FRONTIER ZAPPING”写真集

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12月より、写真表現を楽しむ幅を広げるために、WaPoC連載記事としてメンバーの玉置、藤安、たなかが月交代に写真をベースとした様々なことについてスタート致します。
第一弾としてディレクターの玉置は、関西の写真作家を中心にその活動や展覧会について広く紹介していきます。

そして12月、玉置の連載第一弾は、写真集出版レーベルシティラットプレスの一員でもあり、50部限定の写真集を発行をしたカワトウ氏の作品を紹介致します。
自称「プロフリーター」として時間を無駄なく活用し、アルバイトを掛け持ちしながら作家として活動するカワトウ。バイトとバイトの”合間”までをも利用し、関西圏の空き地を徒歩や自転車で探し求め、撮影を続けています。
今回は、これまでの展覧会や新たに出版された写真集について紹介致します。

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被写体は一貫して空き地だ。”徒広い場”ではなく、イメージの3分の2を建物が占める。そのほとんどが三方を建物で囲まれた狭い“更地”である。

本の一ヶ月前まで建物が立っていたであろう気配を感じさせる”宅地”から、何年も手が加えられていない”荒れ地”まで、その”空き地”と呼ばれる場がこれほどにも多様なことを、彼の作品を通し再確認することができる。
ただ彼の場合、鉄条門やフェンスで囲われた野球遊びができそうな”原っぱ”や、田舎の”旧農地”ではなく、密集する下町の長屋や住宅地、もしくは都会に潜むビルとビルとのすき間を対象に撮影を行っている。

これまでの展示では、自身がプリントしフレーミングされた20×24 inchサイズ(A2_大全紙)の写真作品をインストールし、それらと共に木材や一斗缶、カラーコーンや一般家庭ゴミなど無造作に設置することにより、スペース・場としての”空き地”を意識させる空間を作り出す。
「REFLECTION」(Gallery10:06)

一方で、10×14 inchサイズ(A4_ワイド四切)でプリントされた作品を約400枚、壁面を「これでもか!」と埋め尽くす展示では、色彩や建物の比率によってある程度は選別されているものの、その多種多様な空き地からは、周辺の建造物と空き地との文化的歴史的な関係、あるいは経済的な差異までを感じ取ることができる。
「KEIHANSHIN FRONTIER ZAPPING」(PortGalleryT)

シティラットプレスより新たに出版された写真集は、これまでの展示では強く感じられなかった「境界」をより意識させるものになっている。この写真集の特徴でもある画面横に伸びる、空き地と建物を隔てる境界線(部)をあえて左右のイメージ同士を繋ぎあわす様に編集することで縦位置が基本である彼の作品は、横に広がるものや、横だけではなく縦の境界線(部)により奥行きを感じさせる、現存しない新たな空き地をつくり出す。
また同時に、露わになったことによりこれまで見ることがなかった壁面からは、”面として”の境界を見る側に与える。サイズやパターン、色も違うトタンやブロック塀に触れる様に地面からそそりたつ「空気の塊」としての境界をも想像させる。



「KEIHANSHIN FRONTIER ZAPPING」写真集よりスキャン

密集する地に生まれた「空白」、また、そこにかつて何かあったはずの「余地」には何が存在したのだろうか。手を加えられていてもいなくとも高価であるはずの土地は、上物が取り壊されることにより、なぜかそれもまた雑草が生い茂るとなおさら安っぽく見えてしまう。
開拓地と未開拓地との境域そのものを思惟することにより、これまで見えていなかったものが露わになる。彼の写真は、我々が生活する中で意識的に認識をしていることを、訴えかけているように思う。
WaPoC ディレクター 玉置 慎輔


©カワトウ

KEIHANSHIN FRONTIER ZAPPING
カワトウ

2,000円+税 | 210×297mm | 30ページ | カラー | 限定50部
Published in september 2014
www.cityrat-press.tokyo

2014-11-07 | Posted in 作家紹介Comments Closed 

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