TriGRAPH #2原理性 
林 佑紀 「縁へ」/中澤有基「Relation, appropriate distance」

Pocket

中澤有基「Relation, appropriate distance」
IMG_9907

写真に写る⑴「被写体同士」⑵「撮影者と被写体」との距離感・関係性、この2つを意識的に、また無意識的に鑑賞することは当然であろう(写真に限ったことではないのだが)。中澤による展覧会<無関係な関係、適切な距離>は、タイトルの通り、<距離と関係>を大まかなテーマとして構成され、壁面ごとに<主体と客体>、<0 – 255>、<圧縮された景色>、<Vector>などのサブテーマにより展開し集約された写真展である。
 
本展に展示した中澤作品の場合、「撮影者と被写体」という関係ではなく、そこに写る「被写体同士」の距離感と関係性を示すものである。サブテーマ<主体と客体>で展示された作品には、例えば、何かしらのポールが写っているのだが、それのみを眺めていても何の鉄のポールかわからない。しかし、その背後に写る影や窓ガラスに反射するそのポールが、街灯であることを表している。つまり、本来、主体であるはずのポール=街灯が客体となり、客体であるはずの影や反射する街灯が主体として確立されるように、「被写体同士」の関係性によって成り立たせられた作品である。

IMG_9940
一方、「鑑賞者と撮影者」の距離感や関係性は際立って重要とは感じられないものの、展示された作品の周辺との関係性は十分に捉えることはできる。例えばサブテーマ<0 – 255>での「0 – 255」は、デジタル数値を表す言葉であり、デジタル写真においてRGBが100%以上に混じりあった状態を白と言う。一方、黒とは、デジタル信号が0%の状態を指し、全く信号が無いことを示す。加えて、印刷において言うと、これらの法則は逆転する。つまり、黒は100%であり白は0%としてインクが放出されプリントされることで、紙の上ではデータ上の白と紙そのものの白は同一のものとなる。これらのことを意識して、プリント中央や上下左右に作られた余白部分と、プリント上の白が隣り合わせに配置され、どちらがインク0%で、どちらが紙そのものの白であるかは認識できないような展示にしている。この世の中に”真っ白”=”無”なものはなく、白色なものにせよ灰色なものにせよ何かしら存在している。だが、露出の関係でそれらのRGB数値が100%以上に混じりあった白の場合となると、インク0%としてプリントされる。また、フレーミングされた作品に加え、プリントを直接壁面に貼り付ける展示方法で、壁面の白とプリントの白を隣り合わせに見せることにより、インク0%の白・余白(紙そのものの白)・壁面の白との関係性を示し、それらの境界線を曖昧なものとさせる。
  
これらに加え、レンズが持つ被写界深度の特性を利用して、遠近感を無くしフラットにしたイメージを展示した<圧縮された景色>など、中澤は、人間の眼では捉えることができない現象を作り上げることができる「カメラの眼」や「デジタルの現象」を上手く利用して制作・展示された。稼働壁をうまく利用し、手前にある壁面と奥にある壁面を斜めに設置し展示することにより、人間の眼の遠近感を示すような複雑な展示空間をも作り出す。写るイメージ全てには、記録としてではなく、またそこに写るものの意味合いも特に重要とは言えない。だが、写真に写る対象は、写真の中では距離や関係性という役割を失わせたまま、また新たに作りあげるという原理性を追求しているように思う。

IMG_9893


_____________________
中澤有基
NAKAZAWA Yuki

1980年生まれ
京都市在住

2002年ビジュアルアーツ大阪卒
galleryMainを主宰するなどギャラリストとして活動しながら写真作品を発表。

主な展示に、
2014年 アートフェア「FOTOFEVER ARTFAIR PARIS 2014」Carousel du Louvre(パリ)、
2013年「震える森、焦点の距離」gallery 9(京都)、
2013年「SAKURA010」galleryMain(京都)などがある。

_____________________


林 佑紀 「縁へ」
IMG_9878

林による展覧会「縁へ」は、モノクロで風景を撮影した作品で構成された展示である。3面の壁面にそれぞれ4点、計12点のアクリルダイフィット加工のされた作品の多くは、抽象的で「これです。このようなことです」と断言できるものは少ない。だがそれらのイメージは、こちらへ際立たせるような不思議さを醸し出す作品である。
 
作品を1枚1枚じっくりと鑑賞し「何が写っているのだろう」とそのイメージの背後にある意味合いを読み取ろうとする。例えば、木が写る作品は、これが幹なのか、枝なのか、または(地面から生えるように見えるので)根っこなのだろうか、地面におちる影が強いため夏頃なのだろうか、と探るとき、それらは鑑賞者の知識や文化的な教養などによって左右されるものであるのだが、林の場合、その背後にある意味合いというものよりも、そこに写る「何か」を意識し感じさせる作品である。

IMG_9887
また、本展のテーマ「#2  写真の原理性」を表すものとして、3面の壁面のうち、「光」と「影」が写った作品が両サイドの2面に展示されている。影の元となるものは写っていないものの、壁面に写る斜めに差し込む影や、植物の葉などから落ちる影などが写る。そのような中でも、抽象的な作品の他、数点「木です」「砂です」「水です」と、それらの名を表し、指し示すことができるイメージがある。「写真そのもの」を撮りたいという林の思いとは別に、名をつけてしまえるほど明確にわかるイメージでは、そのものとしての持つ意味合いをベースに、あれやこれやと読み込もうとしてしまう。まだその他の抽象的な作品の方が、林が表現したい「言葉にならない写真」や「写真そのもの撮る」ことを表しているように思う。
 
やはり何度見ても私の頭にはロランバルトが言った「何を写して見せても、どのように写して見せても、写真そのものはつねに目に見えない。人が見るのは指向対象(被写体)であって、写真そのものではない」の考えが抜けず、被写体について考えを巡らしてしまう。「何かの写真」ではなく「写真そのものを撮ろう」と試みる林作品に写っているものだけを抽出して見たとき、結局のところそこに写るものは「現実」そのものということ、ロラン・バルトが言うところの「それは・かつて・あった」という過去の事実だけである。
 
IMG_9885

_____________________
林 佑紀
HAYASHI Yuki

1984年生まれ、大阪在住
2009年-2015年までgallery10:06(自主運営ギャラリー 大阪)に在籍

個展に、
2013年「carve gravity」gallery RAVEN (東京)/gallery 10:06(大阪)/gallery CLASS (奈良)
2011年「nation of city slave」gallery10:06(大阪)、
2011年「untitled」gallery10:06(大阪)、
2010年「suburb」gallery10:06(大阪)、
2009年「Blitzkrieg Bop」gallery10:06(大阪)がある。

_____________________

TriGRAPH #2 原理性
林 佑紀 「縁へ」
中澤 有基 「Relation, appropriate distance」

6月15日 (wed.)ー6月26日(sun.)
13:00ー19:30
※6月20日(mon.) close

Talk Event
6月19日(日) 19:00 入場無料
林 佑紀×中澤有基×玉置慎輔(WaPoC)

企画・主催|galleryMain
共催・デザイン・展評|WaPoC

2016-08-02 | Posted in ExhibitionComments Closed 

関連記事