I Only Have Eyes For You

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“I Only Have Eyes For You
この度WaPoCは、大阪 中之島にあるギャラリー「中之島バンクス de sign de >」にて開催する写真のグループ展「I Only Have Eyes For You」を企画いたしました。
 
「I Only Have Eyes For You」(=あなただけしか見えない)は、1935年にミュージカル映画で紹介され、その後JAZZのスタンダートナンバーとなった楽曲のタイトルを引用したものです。タイトル中の、「あなた」を強調させたテーマのもと、写真を用いて精力的に活動する5名の写真家の展覧会を開催いたします。

今回は、各作家の作品に現れるそれぞれの「あなた」への認識の違いを、ポートレート写真を通して見出すものといたします。ポートレート写真において、撮影者の「私」と被写体の「あなた」、また鑑賞者の「我々」の関係性は無視できないものですが、展示する作品が皆、ポートレートという写真の基本的な手法を用いたものだけではありません。
本展では、従来のポートレートの枠組みでは捕らえられない視点からアプローチしたそれぞれの「あなた」を提示いたします。

“I Only Have Eyes for You” is a romantic love song and jazz standard, introduced some 81 years ago in the 1935 Hollywood musical Dames. The song emphasizes the incredibly narrow focus a person may experience, particularly when in love. Thematically emphasizing the ‘you’ portion of the title, this exhibition highlights the works of five artists who energetically produce work within the medium of photography.We would like to highlight the contrasting perceptions of ‘you’ as seen in the artists’ work, and their differing takes on portraiture itself.

While photographic portraiture encompasses the ‘I’ of the photographer along with the ‘you’ of the subject, as well as the ‘we’ as understood by the viewer, the photographs in this exhibition cannot be completely understood through the narrow classical understanding of ‘portraiture.’
“I Only Have Eyes for You” represents the various incarnations of ‘you’ among the artists’ unique approaches, through which they create representations that were heretofore unreachable within portraiture’s existing framework.

 
 
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会 期|2016年5月17日(火)〜6月5日(日)
休廊日|月曜日
会 場|中之島バンクス de sign de>
時 間|11:00-19:00
入 場|無料
主 催|WaPoC
共 催|中之島バンクス de sign de >
作 家|浦芝眞史、倉谷 卓、田中ヒロ、藤安 淳、横山大介
イベント|オープニングパーティ 5月21日(土)18:00- (無料)
     軽食とお飲み物をご用意いたします。出展作家も参加いたしますので、ぜひお越しください。

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浦芝眞史|URASHIBA Masashi

浦芝は、男性のポートレートを撮影した作品で2015 年第13 回写真「1_WALL」のグランプリを受賞するなど、若手写真家の中でも注目される作家の一人です。日本人だけではなく国籍の異なるストレート/同性愛者/ トランスジェンダーなどのセクシャリティーにおいて、人を区別/分類する境界を問うように撮影を続けています。また、今回展示している「あなた」は、本来、男性なのか、女性なのか、一見してわからない身体も写し出され、人間自身に美しさを表しています。
「ゆく、ふれるやいなや」では、2台のスライドプロジェクターを使用して、どちらからのイメージも重なるように投影しています。片方は、自動で回転しイメージが投影され、もう片方のプロジェクターでは、鑑賞者が自らボタンを押し別のイメージへ移ることができます。これらの行為は、鑑賞者が「あなた」を撮影する行為とリンクし、一方で、2つのプロジェクターから次にどのイメージが投影され、どのように重なり合うかわからない偶然性の中において、「セクシャリティーにおいて区別すること」の無意味さを表しているとも言えます。

倉谷 卓|KURAYA Takeshi

「Pets」は、行方不明になったペットを探す貼紙の写真を複写したものです。飼い主がこれらの写真を撮影した際に、まさか自分のペットが迷子になり、家を抜け出したことで貼紙として使用することになるとは想像もしていなかったでしょう。倉谷は、それらの写真が本来とは全く別の目的で使用され、異なった役割が加えられていることに注目し制作を行っています。また、貼紙の写真に添えられている文章の一部を、日→英、英→日と翻訳機で自動翻訳を繰り返すことにより、意味や語としての機能が変換された文章も含め作品として発表しています。「Pets」では、写真がもつ「価値」や「役割」が状況や環境によって変化する写真の特異性を表しています。
貼紙が貼られた外壁や電信柱などの存在を消し、またその街の空気感をも消し去り切り取られた「あなた」は、倉谷によりまた別の新たなイメージとして息を吹き込まれています。「Pets」をポートレートとして捉えてみたとき、雨風や太陽光により劣化してしまったことで、最も重要である特徴を示す情報を失った「あなた」の表情は、わたしたちをどこか寂しく切ない気持ちにもさせるものであります。

田中ヒロ|TANAKA Hiro

田中ヒロは、2009 年からカリフォルニアに移り住み、アメリカのインディーバンドと一緒にアメリカやヨーロッパで開催される多くのツアーに同行し撮影を続けています。ただ単にライブの様子を撮影しているだけでなく、ツアー中にバンで移動し友人宅で過ごす時間であったり、またパーティーやBBQ などのイベント、そしてアメリカの自然や風景を対象に、ツアーを通して数多くのバンドマンの日常を映しだしてきました。
今回は、そんな全米を旅する中で生まれた新作です。ブロードウェイで撮影された「Around 42nd and 7th」は、その地を訪れる観光客や、観光客向けにコスチュームを着てパフォーマンスをする者、もちろんのこと、ニューヨーカーをも対象に堂々とフラッシュを使用し、通り行く人々を盗み撮りしています。写真に写る「あなた」は、撮られることを意識しているわけではありません。今やどこにでもある監視カメラにより、「撮る撮られる」の関係性が無くなる一方、SNSでは、自撮りをしネット上に自らアップする「selfie」が世界的に流行していることを、茶化しているようでもあります。

藤安 淳|FUJIYASU Jun

双子である作家本人と、自身の弟の全身のパーツを同じフォーマットで撮影した処女作「DZ dizygotic twins」を発表して以来、藤安は一貫してポートレートを表現手段として制作を行っています。双子でない我々は、しばしば双子を2人1 組みとして捉え、彼らを「幾度となく比べて」しまっているこの行為こそ、藤安が作品を制作する上での1つのきっかけとなっています。
今回展示する「empathize」は、他の双子を撮影したシリーズです。それぞれの部屋の中で個別に撮影した「あなた」を、別々にフレーミングして展示しています。そこに写る「あなた」を、一人ひとりの部屋で撮影することにより、背景に見え隠れする個性や生活環境がもつ差異、つまり、単一の「個」としてのアイデンティティーをより強く感じとることができます。2人の「あなた」と撮影者である藤安、そして鑑賞者としての我々など「他者との関係性」を表現しています。

横山大介|YOKOYAMA Daisuke

横山は、10 歳のときに自身が吃音症であることに気がついてから、断絶される会話によるコミュニケーションに違和感を感じていると言います。彼にとって写真機は、その不通となる会話によるコミュニケーションを補う装置として、ポートレート写真を、言わば視線によるコミュニケーションツールとして用い制作を続けています。
「ひとりでできない」での「あなた」と、鑑賞者である我々は、その力強い表情により、自然と彼らと向き合い視線を交わすことでしょう。被写体だけにピントをあわし、背景をボカした無機質な場所での撮影が多いのも、横山が強く彼らと対話し何かしら伝達したいという思いの表れでもあり、またそれは、横山自身が彼らと真剣に向き合い、不自由なくコミュニケーションをした証しでもあります。「Telephone Portrait」では、実際に電話をしている最中の「あなた」を撮影したものです。対話することと違い、通話中に眼と耳で認識するものは、全く別の情報を得る状態になっています。そのような状況での通話中の喜色や、苛立ちなどの表情、また身振り手振りする動作は、いったい誰のものなのだろうか。宙づりになるコミュニケーション手段を撮影することにより、多様化するコミュニケーションの本質を探っているように感じとれます。




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浦芝眞史 URASHIBA Masashi

1988 大阪生まれ
2011 関西大学法学部政治学科卒業
2013 ビジュアルアーツ専門学校・大阪 写真学科卒業

[発行物]
2012 ZINE『ユートピア』
2014 ZINE『Vitamin Boys』

[主な展覧会]
2016 第13回写真「1_WALL」グランプリ受賞個展 ガーディアン・ガーデン
2015 第13回写真「1_WALL」グループ展 ガーディアン・ガーデン
2014 START UP exhibition vol.1 Gallery Bi0
2013 Kyoto Current 2013 ZINE展覧会 京都市美術館別館

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倉谷 卓 KURAYA Takashi

1984 山形生まれ
2005 日本写真芸術専門学校 卒業
現在、東京在住

ペット、故郷の風習、家族、放射能など、多様なモチーフに独自の視点を注ぎ、現代社会における写
真の役割、そして、写真と人との関係性をあらわにする作品を制作している。

[主な個展]
2015 「カーテンを開けて」72gallery / 東京
2015 「Ghost’s Drive」森岡書店 / 東京
2014 「Pets」Broom Store / 大阪
2013 「カーテンを開けて」birdo space / 宮城
2009 「After The Sunset」ニコンサロン大阪 / 大阪
2009 「After The Sunset」ニコンサロン新宿 / 東京
2008 「淵」コニカミノルタプラザ / 東京

[主なグループ展]
2015 「新章風景」ターナーギャラリー / 東京
2015 「いとしのちいちゃん」倉谷卓× 山崎雄策 CCAA / 東京
2015 「TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD NEW VISIONS #1」G/P+G3 gallery / 東京
2014 「AXIS フォトマルシェ vol.01」AXIS ギャラリー / 東京
2014 「西根ナーレ2014」長井市西根地区 / 山形
2013 「KAWABA NEW-NATURE PHOTO AWARD 2013」田園プラザ / 群馬
2013 「Ongoing Fair 2013」Art Center Ongoing / 東京
2008 「フォトプレミオ2007 年度賞受賞展」コニカミノルタプラザ / 東京

[受賞]
2014 「TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD 2014」 審査員賞
2013 「TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD 2013」 審査員賞
2012 「TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD 2012」 入賞
2011 「塩竈フォトフェスティバル2011 写真賞」 大賞
2009 「ニコンサロン juna21」 入選
2008 「コニカミノルタ フォトプレミオ2007」 特別賞

[出版]
2011 「カーテンを開けて / A Glimmer of Light」 (塩竈フォトフェスティバル)


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田中ヒロ Hiro Tanaka

2009 尾仲浩二 写真ワークショップ参加
現在、サンタモニカ/東京在住

[主な個展]
2014 「Buffalo」ギャラリー 街道 / 東京
2014 「Dew Dew, Dew Its」Epoch Coffe / テキサス州, オースティン
2014 「Dew Dew, Dew Its」The North Door / テキサス州, オースティン
2014 「Dew Dew, Dew Its」Stories / カリフォルニア州, ロサンゼルス
2014 「Dew Dew, Dew Its」Polish National / ニューヨーク州, ブルックリン
2014 「Dew Dew, Dew Its」Lake Stree / ニューヨーク州, ブルックリン
2013 「Dew Dew, Dew Its」ギャラリー街道 / 東京
2012 「Dew Dew, Dew Its」Town Hall Pub / イリノイ州, シカゴ

[主なグループ展]
2015 「RAIEC SATELLITE TOKYO 展」3331 Arts Chiyoda / 東京
2015 「record vol.14」in)(between gallery / パリ
2014 「Shasin Book Award 2014受賞展」Photo Off / フランス, パリ
2014 「Aperture Summer Open」Aperture Gallery / ニューヨーク州, マンハッタン
2013 「第4回 ディベロッピング展」海岸通りギャラリー・CASO / 大阪

[受賞]
2014 「ShaShin Book Award 2014」大賞受賞
2013 「Kassel Fotobook Festival ‒ Photo Book Award 2013 ‒ 」ノミネート入選

[出版]
2012 「Dew Dew, Dew Its:」 (Asian Man Records)


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藤安 淳 FUJIYASU Jun

1981 東京都生まれ
2005 同志社大学経済学部卒業
2007 写真表現大学修了
現在、大阪在住

[主な個展]
2014 「empathize」The Third Gallery Aya / 大阪
2013 「藤安淳展” empathize@Fundokin Apartment in OITA”」フンドーキンマンション/ 大分
2012 「empathize」The Third Gallery Aya / 大阪
2009 「34」The Third Gallery Aya / 大阪
2009 「DZ dizygotic twins」塩竈フォトフェスティバル2009 / 宮城
2009 「DZ dizygotic twins」ギャラリーPIPPO / 東京
2008 「DZ dizygotic twins」彩都メディア図書館 / 大阪

[グループ展]
2015 「Portraits」The Third Gallery Aya / 大阪
2015 「record vol.14」 in)(between gallery / パリ
2014 「neo-824」The Third Gallery Aya / 大阪
2014 「Shasin Book Award 2014受賞展」Photo Off / フランス, パリ
2013 「viewing- 写真家とポートフォリオ-+ 鋭漂」塩竈フォトフェスティバル2013 / 宮城
2012 「第3 回ディベロッピング展」 海岸通ギャラリー・CASO / 大阪

[受賞]
2014 「ShaShin Book Award 2014」受賞
2008 「第1 回塩竈フォトフェスティバル写真賞」大賞受賞

[出版]
2008「DZ dizygotic twins」 (塩竈フォトフェスティバル)


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横山 大介 YOKOYAMA Daisuke

1982 兵庫県生まれ
2005 同志社大学文学部文化学科文化史学専攻 卒業
現在、大阪在住

[主な個展]
2016 「TESHIMA2012-2016」食堂101 号室 / 香川
2016 「ひとりでできない」新宿ニコンサロン / 東京
2016 「ひとりでできない」大阪ニコンサロン / 大阪
2014 「ひとりでできない」CAP STUDIO Y3 / 兵庫
2013 「交換」MIO PHOTO OSAKA ミオフォトアワード・プライム 天王寺ミオ本館 12階ミオホール / 大阪

[主なグループ展]
2015 「フォトふれNEXT PROJECT EXHIBITION 2015 東川町 杉山美容室隣 / 北海海道
2013 「豊島 MEETING 2013-ART in 片山邸」香川県土庄町指定有形文化財 片山邸 / 香川
2012 「冬の引き出し」Port Gallery T / 大阪
2011 「東川町国際写真フェスティバル インディペンデンス展」東川町文化ギャラリー / 北海道

[その他]
2015 「WORK STATION」 彫刻家 北浦和也とのワークショップ あべのま/ 大阪

 
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2016年5月14日更新